さぁ、僕とルイーシュが出した結論は。

「上からでも下からでも良いですが、他にもう一つ方法があるってこと、忘れてませんか?」

と、ルイーシュが聞いてきた。

…他にも?

「どうやって出るの?」

「腹の中から風穴を開けて、無理矢理出る」

成程。それは名案だね。

「出来るかな。僕とルイーシュに」

「さぁ…どうでしょうね。この、いかにも肉厚そうな腹の脂肪を突き破るのは、難しいかもしれませんが…」

「…が?」

「…少なくとも、下から出るよりマシじゃないですか?」

成程。確かに。

「分かった。やってみよう」

「俺が補助魔法をかけるので、令月さんの最大火力で、思いっきり腹の肉を切り裂いてください」

ルイーシュが得意なのって、空間魔法だっけ?

今はあまり役に立ちそうにないね。

僕は風呂敷包みの中から、愛用の小太刀を取り出した。

果たして、この刃が通用するかな。

「時魔法で、一時的に加速をかけます。…行きますよ」

「うん」

「ot eccelerata」

ルイーシュは、僕に加速の時魔法をかけた。

同時に、僕は唯一使える魔法…渾身の力魔法を両手の小太刀に込め。

肉の壁に向かって、弾丸の如き速度で飛んだ。

振りかぶって、右手の小太刀で肉を断ち切る一閃。

続けざまに、利き手の左手で二閃。

確かな手応えと共に、肉の壁の向こうに、外の光が見えた。

その隙を、僕達は見逃さなかった。

「ルイーシュ!」

「行きます。…rtanspotr」

すかさず、ルイーシュが得意の空間魔法を発動した。

その手際は、さすがと言わざるを得ない。

僕とルイーシュは、胃の中から無理矢理抉じ開けた穴を通って、身体の外に這い出ることに成功した。

…しかし、すぐにまた問題発生。

外に出てようやく、僕とルイーシュが一体「何」の腹の中にいたのか分かった。

それは、巨大な体躯をした化け物だった。

他になんて表現したら良いのか分からない。

口が耳元まで裂け、身体に皮膚はなく、赤黒い肉が剥き出しになっている。

目は三つあるわ、それなのに耳は一つしかなく、おまけに鋭いツノが生えていた。

そして何より特徴的なのは、背中の羽根。

退化した骨組みだけのような羽根が、背中から突き出ていた。

凄い姿だ。…いかにも、冥界の魔物って感じがするね。

なんていう種族かは分からない。マシュリと同じ、神竜族やケルベロスじゃないことは確かだ。

その化け物が、苦悶と怒りの混じった咆哮をあげた。

その耳障りな叫び声に、思わず耳を塞いでしまったが。

考えてみれば、お腹の中に風穴を開けられたのだから、叫ぶのも当然である。

…なんか、ごめんね。

でも、僕も生きるのに必死だから。