…今度は化け猫まで出てきたんですけど。

でも、今僕達を追いかけているあのデカブツの化け物に比べたら、化け猫くらい可愛いものですよね。

…それに、何より目を引くのは…。

「ナジュせんせー。あの、首輪…」

「…えぇ、そうですね」

すぐりさんも気づいてますよね。…当然。

あの化け猫がつけている首輪、あれはマシュリさんの…。

化け猫に姿を変えた『マシュリさん』は、僕達をじっと見つめ。

それから、ついてこいとでも言うように駆け出した。

…成程、そういうことですか。

「済みません、すぐりさん。作戦変更です」

「その方が良さそーだね」

ここで足止めするつもりでしたけど、それはやめます。

『マシュリさん』が、導いてくれるみたいですから。

僕はそれを信じて、ついていきますよ。

『マシュリさん』は、出来るだけ落ちている残骸が少ない方に、少ない方に誘導してくれているようだった。

一体何処に向かっているのか。『マシュリさん』は建物の外ではなく、どんどん建物の奥深くに向かっていた。

こういう時は、つい外に逃げたくなるものですけど…。

建物中を逃げ回って、もしそこが行き止まりだったら、どうしようも…。

「…!」

『マシュリさん』が足を止めたのは、本当に行き止まりの部屋だった。

誘い込まれてしまいましたね。…このままじゃ、後ろから追いかけてくる化け物に捕まってしまう。

…けれど、『マシュリさん』は逃げ道を示してくれていた。

『マシュリさん』が足を止めた行き止まりの部屋には、亀裂が入っていた。

赤黒い、時空の裂け目が。

『マシュリさん』はその裂け目の横に立ち止まって、こちらをじっと見ていた。

…ここに飛び込め、ってことですね?分かりますよ。

ただし、その勇気があるかどうかは別の話ですけどね。

「さて、どうします?…すぐりさん」

「どーもこーも、このままじゃ追いつかれるんだから…。選択肢は一つでしょ」

ですよねー。

済みませんね、分かりきってること聞いてしまって。

じゃあ、行きましょうか。

僕とすぐりさんは、同時に裂け目に向かって飛び込んだ。

果たして、何処に繋がっているのやら。

後は野となれ山となれ、ってね。






「…!」

裂け目に飛びこむなり、強い光に包まれ。

再び目を開けると、そこにあったのは、古ぼけた洞窟の入り口だった。