しかし、そう簡単には逃してもらえない。
檻の部屋を出ても、関係なしに化け物は追いかけてきた。
「うわぁ…。しつこい。まだ追いかけてきてますよ」
「めちゃくちゃだね、あいつ。痛覚とかないのかな」
本当ですね。
僕とすぐりさんは、廊下に散らばっているガラスの破片や、崩れた壁の欠片を避けるようにして逃げているが。
あの化け物には、そんなことは関係ない。
ガラスの破片だろうと壁の残骸だろうと、平気で踏みつけて追いかけてくる。
破片が裸足の足の裏に突き刺さっても、全くお構いなし。
ひたすら雄叫びをあげながら、こちらに向かって突進してくる。
「…これは不味いかもしれませんね」
こちらは、落ちているものを避けながら、慎重に逃げ道を確保しなければならないのに。
向こうは、何が落っこちていようとお構いなしに、真っ直ぐに迫ってくるのだ。
このままじゃ、いずれ追いつかれる。
そうならない為には…。
僕は瞬時に考えを巡らし、そして決断した。
「すぐりさん、先に一人で逃げてください。あなた一人なら逃げ切れるでしょう」
「はぁ?」
すぐりさんは僕より遥かに俊敏だ。一人だけなら逃げられる。
多分、この状況だと僕が一方的に足手まとい。
だったら、先に一人ですぐりさんを逃がす。
命に残機のないすぐりさんを無事に逃がすことが、何より優先だ。
「先に…そうですね、最初に辿り着いた無人島の浜辺の近くで待っててください。後で、そこで落ち合いましょう」
「ナジュせんせーはどーするのさ?」
「ここで足止めをします」
すぐりさんが無事に逃げ切るまで、時間を稼ぎますよ。
例え勝てなくても、時間稼ぎくらいなら出来るでしょう。
「あんな化け物相手に、ナジュせんせー一人で…」
「忘れましたか?僕は不死身なので。いかに相手が化け物だろうと魔物だろうと、僕は死にません」
「そーいうの気に入らないなぁ。俺のこと、逃してもらわなきゃいけないお姫様だとでも思ってんの?」
お姫様だとは思ってませんけど。
逃してあげなきゃいけないとは思ってますよ。大人の責任としてね。
「問答している暇はありません、早く…」
と、僕が言いかけたその時。
ちりん、と鈴の音がした。
…えっ?
その聞き覚えのある音に、僕も、すぐりさんも、化け物に追われていることも忘れて振り向いた。
すると、そこにいたのは…左半身が異様に膨らんだ、化け猫だった。
檻の部屋を出ても、関係なしに化け物は追いかけてきた。
「うわぁ…。しつこい。まだ追いかけてきてますよ」
「めちゃくちゃだね、あいつ。痛覚とかないのかな」
本当ですね。
僕とすぐりさんは、廊下に散らばっているガラスの破片や、崩れた壁の欠片を避けるようにして逃げているが。
あの化け物には、そんなことは関係ない。
ガラスの破片だろうと壁の残骸だろうと、平気で踏みつけて追いかけてくる。
破片が裸足の足の裏に突き刺さっても、全くお構いなし。
ひたすら雄叫びをあげながら、こちらに向かって突進してくる。
「…これは不味いかもしれませんね」
こちらは、落ちているものを避けながら、慎重に逃げ道を確保しなければならないのに。
向こうは、何が落っこちていようとお構いなしに、真っ直ぐに迫ってくるのだ。
このままじゃ、いずれ追いつかれる。
そうならない為には…。
僕は瞬時に考えを巡らし、そして決断した。
「すぐりさん、先に一人で逃げてください。あなた一人なら逃げ切れるでしょう」
「はぁ?」
すぐりさんは僕より遥かに俊敏だ。一人だけなら逃げられる。
多分、この状況だと僕が一方的に足手まとい。
だったら、先に一人ですぐりさんを逃がす。
命に残機のないすぐりさんを無事に逃がすことが、何より優先だ。
「先に…そうですね、最初に辿り着いた無人島の浜辺の近くで待っててください。後で、そこで落ち合いましょう」
「ナジュせんせーはどーするのさ?」
「ここで足止めをします」
すぐりさんが無事に逃げ切るまで、時間を稼ぎますよ。
例え勝てなくても、時間稼ぎくらいなら出来るでしょう。
「あんな化け物相手に、ナジュせんせー一人で…」
「忘れましたか?僕は不死身なので。いかに相手が化け物だろうと魔物だろうと、僕は死にません」
「そーいうの気に入らないなぁ。俺のこと、逃してもらわなきゃいけないお姫様だとでも思ってんの?」
お姫様だとは思ってませんけど。
逃してあげなきゃいけないとは思ってますよ。大人の責任としてね。
「問答している暇はありません、早く…」
と、僕が言いかけたその時。
ちりん、と鈴の音がした。
…えっ?
その聞き覚えのある音に、僕も、すぐりさんも、化け物に追われていることも忘れて振り向いた。
すると、そこにいたのは…左半身が異様に膨らんだ、化け猫だった。