――――――…こちらは私、シルナとジュリス君のペア。

お墓で目を覚ました私とジュリス君は、持ってきたチョコレートが全滅していることに気づいた後。

お墓に刻まれている文字が、もしかして数字じゃないかと話し合った後。

そうだ、こんな時こそシュニィちゃんに渡された魔法道具の出番、とばかりに。

ここに来る時に持ってきた笛を、ポケットから取り出したんだけど…。

…残念ながら、その笛は朽ちて錆びてしまって、全く使い物にならなかった。

試しに息を吹き込んでみたら、ボロっと崩れて、跡形もなく笛は粉々になってしまった。

非常に悲しい。

そして怖い。

そろそろ、私は限界だよ。

「う、うぅ…。ジュリス君、大丈夫?何もいない?いないよね?」

「…なんもいねーよ…」

「そ、そ、そうだよね!大丈夫だよね。大丈夫、大丈夫…だいじょ、」

必死に、そう自分に言い聞かせようとした丁度時。

突然、強い風が吹いて、周囲の木々をざわざわと揺らした。

「ぴぇぇぇっ!」

「ちょ、アホかあんた。くっつくんじゃねぇ。ただの風だろ!」

心臓がヒュッてなったよ。ヒュッって。

もし一人だったら、その場にへなへなと崩れ落ちて、腰が砕けて立てなかったと思う。

思わずジュリス君に飛び付いて、必死に平静を保っている状態。

「ぴぇぇぇ…」

「風くらいでビビるなよ…。幽霊が出てきた訳でもないのに」

「で、で、出てきてからじゃ遅いんだよっ…?」

お、お化けになんか出会ってしまったら、私はどうしたら良いんだ。

「あんたなぁ…。イーニシュフェルトの聖賢者なんだろ?」

「も、も…元、ね…」

今は別人だよ。

とてもじゃないけど、「聖」賢者とは言えない。

「邪」賢者だったら納得するけどね。

「だったら、幽霊の一体や二体くらい、見たことあるんじゃねぇの?」

「そ、それはどうかな…」

「つーか、聖なる神に平気で喧嘩を売る癖に、幽霊にはビビるのかよ。意味分かんねぇな」

「…」

それを言われちゃ…言い返す言葉がないけど。

それはそれ、これはこれって納得してもらえないかな…。