…うーん…。儚い。
兄妹の仲直りどころか…両国の友好関係を築くどころか…。
ナツキ様は終始喧嘩腰で、睨み合うばかりでまともに会話も出来なかった。
これじゃあ仲直りなんて、夢のまた夢。
むしろ、前より更に関係が悪化しているような…。
「…フユリ様…」
「…」
取り残されたフユリ様は、ぎゅっと唇を結んで俯いていた。
フユリ様の心中は如何ほどか。
私以上にフユリ様は、忸怩たる思いを抱えているに違いない。
それなのに。
「…申し訳ありません。シルナ学院長」
やっと口を開いたかと思うと。
何故か、フユリ様は私に謝罪した。
「どうして謝られるのですか」
「あなた方が命を懸けて、決闘を戦って…勝ち取った折角の機会を、活かすことが出来ませんでした」
あぁ、そういうこと…。
「私がもっと…上手く立ち回っていればあるいは…」
「どうかお気になさらず。フユリ様のせいではありません」
どれほどフユリ様が上手く立ち回ったとさても。
ナツキ様のあの態度を見るに、肝心なことを話してくれる気は全然なさそうだったし。
交渉決裂で、この場で決闘の再現が繰り広げられなかっただけ良しとしよう。
それに…正直なところ。
「こうなるのではないかと思っていました。ナツキ様は…その、そう簡単に折れる方ではありませんから」
「…そうですね」
ナツキ様の我の強さ、押しの強さは、先の件で充分に理解している。
「ナツキ様の真意は分かりましたか?」
この会談の目的。
ナツキ様の真意を知るという目的を、果たすことが出来れば…。
「…えぇ、そうですね。兄の本心…兄の心の奥底にある、私への憎しみ…祖国への憎しみは、充分に伝わってきました」
「ではナツキ様は…やはり、フユリ様に復讐する為に…」
「話し合いで解決出来るものなら、そうしたかった…。ですが、私がいくら説得しても…考えを変えてはくれないようです」
…そうだね。
それどころか、フユリ様が何とか宥めようとすればするほど、余計に憎しみを募らせているようだった。
…悲しい話だ。
二人は家族なのに。血を分けた兄妹のはずなのに…。
こうも理解し合えない。手を取り合うどころか、国を巻き込んで争おうと…。
「…ならば、私も覚悟を決めなければならないでしょう」
「…フユリ様…」
「兄の言葉を聞きましたか。シルナ学院長…。兄は『次の矢』を用意していると言いました」
…うん、聞いたね。
確かにそう言ってた。…惜しいことに、肝心なところはハクロちゃんとコクロちゃんに止められちゃったけど。
「つまり、まだ諦めていないということです。今度は別の手段を以て、このルーデュニア聖王国を脅かそうとしているのかもしれません」
「はい」
「それがどのような手段なのか、いつ行われるのか…。まだ分かりませんが、しかし、私のやるべきことは一つです。愛する祖国を守り、国民達の生活を守ること。それが、女王としての私の務め」
仰る通りです。
「兄が肉親の情を捨て、非道な手段に訴えると言うなら…私も同じくらい残酷にならなければならないのでしょう」
「フユリ様にそのようなことはさせません…。どうか、私達を頼ってください」
「…済みません。今度もまた、シルナ学院長先生方の力を借りることになるかもしれません」
フユリ様は私の方を向き、頭を下げた。
一国の女王に頭を下げられ、あまりの畏れ多さに狼狽えた。
兄妹の仲直りどころか…両国の友好関係を築くどころか…。
ナツキ様は終始喧嘩腰で、睨み合うばかりでまともに会話も出来なかった。
これじゃあ仲直りなんて、夢のまた夢。
むしろ、前より更に関係が悪化しているような…。
「…フユリ様…」
「…」
取り残されたフユリ様は、ぎゅっと唇を結んで俯いていた。
フユリ様の心中は如何ほどか。
私以上にフユリ様は、忸怩たる思いを抱えているに違いない。
それなのに。
「…申し訳ありません。シルナ学院長」
やっと口を開いたかと思うと。
何故か、フユリ様は私に謝罪した。
「どうして謝られるのですか」
「あなた方が命を懸けて、決闘を戦って…勝ち取った折角の機会を、活かすことが出来ませんでした」
あぁ、そういうこと…。
「私がもっと…上手く立ち回っていればあるいは…」
「どうかお気になさらず。フユリ様のせいではありません」
どれほどフユリ様が上手く立ち回ったとさても。
ナツキ様のあの態度を見るに、肝心なことを話してくれる気は全然なさそうだったし。
交渉決裂で、この場で決闘の再現が繰り広げられなかっただけ良しとしよう。
それに…正直なところ。
「こうなるのではないかと思っていました。ナツキ様は…その、そう簡単に折れる方ではありませんから」
「…そうですね」
ナツキ様の我の強さ、押しの強さは、先の件で充分に理解している。
「ナツキ様の真意は分かりましたか?」
この会談の目的。
ナツキ様の真意を知るという目的を、果たすことが出来れば…。
「…えぇ、そうですね。兄の本心…兄の心の奥底にある、私への憎しみ…祖国への憎しみは、充分に伝わってきました」
「ではナツキ様は…やはり、フユリ様に復讐する為に…」
「話し合いで解決出来るものなら、そうしたかった…。ですが、私がいくら説得しても…考えを変えてはくれないようです」
…そうだね。
それどころか、フユリ様が何とか宥めようとすればするほど、余計に憎しみを募らせているようだった。
…悲しい話だ。
二人は家族なのに。血を分けた兄妹のはずなのに…。
こうも理解し合えない。手を取り合うどころか、国を巻き込んで争おうと…。
「…ならば、私も覚悟を決めなければならないでしょう」
「…フユリ様…」
「兄の言葉を聞きましたか。シルナ学院長…。兄は『次の矢』を用意していると言いました」
…うん、聞いたね。
確かにそう言ってた。…惜しいことに、肝心なところはハクロちゃんとコクロちゃんに止められちゃったけど。
「つまり、まだ諦めていないということです。今度は別の手段を以て、このルーデュニア聖王国を脅かそうとしているのかもしれません」
「はい」
「それがどのような手段なのか、いつ行われるのか…。まだ分かりませんが、しかし、私のやるべきことは一つです。愛する祖国を守り、国民達の生活を守ること。それが、女王としての私の務め」
仰る通りです。
「兄が肉親の情を捨て、非道な手段に訴えると言うなら…私も同じくらい残酷にならなければならないのでしょう」
「フユリ様にそのようなことはさせません…。どうか、私達を頼ってください」
「…済みません。今度もまた、シルナ学院長先生方の力を借りることになるかもしれません」
フユリ様は私の方を向き、頭を下げた。
一国の女王に頭を下げられ、あまりの畏れ多さに狼狽えた。