ナツキ様は…生粋の魔導師排斥論者だもんなぁ。
でもなぁ…。今君の後ろにいるハクロちゃんとコクロちゃんの二人も…魔導師なんだよなぁ。
魔導師と仲良くすることは出来ない。けど、その力を利用することは厭わない。
と言うより…利用出来るものは何でも利用する主義なんだろうね。
「力を持つ者に権利など与えるべきじゃない。魔導師に好き勝手させているお前の国は、いずれ魔導師に乗っ取られる羽目になるだろうよ。…いや、もう既にそうなってると言っても過言じゃないか」
じろり、とナツキ様は私を睨んだ。
うっ…。その視線が痛い。
私はルーデュニア聖王国を乗っ取るつもりなんて…全くないんだけど…。
「魔導師が国を支配すれば、いずれアーリヤット皇国にも牙を剥くだろう。そうなる前に魔導師を正しく管理し、力を制限する必要があるんだよ」
「その為に、ルーデュニア聖王国に攻撃を仕掛けたのですか。その為にあのような非人道的な条約を考えたのですか」
「他に理由があるのか?」
…ということは。
これが、ナツキ様の真意…。
…では、ないよね。
「…本当にそれだけが理由ですか」
「何?」
「私のことが憎いから…私と、この国が憎いから…復讐しようとしているだけじゃないのですか」
厳しい声で問い詰めると、ナツキ様の目の色が変わった。
こ、怖い。
明らかに、ナツキ様の逆鱗に触れてしまったようだ。
「国の問題と、私達兄妹の問題は別のものです。私を憎むのは構いません。でも国民を巻き込むような真似は…」
「…黙れ。それ以上喋るな」
「魔導師を憎んでいるのも、それが理由なのではないですか。ルーデュニア聖王国が親魔導師国家というだけで、対抗する為にわざと魔導師排斥論者を、」
「黙れっ!」
ひぇっ。
ナツキ様の怒りを宿した目は、とてもじゃないが妹に対するそれではなかった。
親の仇。親の仇を見る目だよ。どう見ても。
同じ親のもとに生まれた兄妹なのに。
国と国との話し合いの最中に怒号を飛ばすなんて、尋常じゃないよこれ。
殴り合いが始まるんじゃないかと、私は内心酷くハラハラしていた。
や、やっぱり羽久に一緒に来てもらった方が良かったんじゃない。
いざとなったら羽久に時間を止めてもらえば、殴り合いの喧嘩だけは防げるから。
「知った風な口を利くな。決闘で勝ったからと言って良い気になるなよ。この程度は想定内なんだ。既に次の矢は用意されて…」
次の矢?
私とフユリ様が揃って首を傾げ、問い詰める前に。
「皇王陛下」
「それ以上は」
ずっと沈黙を守っていたハクロちゃんとコクロちゃんが、ナツキ様を制した。
二人の従者に止められて、ナツキ様はハッとして口を噤んだ。
明らかに失言だったようだ。
惜しかった。もう少し二人が止めるのが遅ければ…「次の矢」というのが何を意味するのか聞けたかもしれないのに。
「どういう意味です。これ以上、我が国にまだ何か…」
「…話す義理はない」
「ですが…!」
「決闘の条件は、『会って話すこと』だったはずだ。尋問に応じるとは言っていない」
取り付く島もない、とはこのことである。
でも、実際その通りだから、深く追及することは出来なかった。
それどころか。
「これで目的は果たしただろう」
話はもうおしまい、とばかりに。
ナツキ様は早々に会談を切り上げ、席を立った。
「待ってください。話はまだ…」
「これ以上、お前と話すことなどない」
そう言って、ナツキ様はさっさと背中を向けた。
あぁ…。全然、話にならない。
「ハクロ、コクロ、行くぞ。もう一秒だって、この国に居るのは御免だ」
最後に、心底不機嫌そうに吐き捨て。
フユリ様の制止も聞かず、二人の従者を伴って、ナツキ様はくるりと踵を返した。
時間にして、僅か10分にも満たない「会談」だった。
でもなぁ…。今君の後ろにいるハクロちゃんとコクロちゃんの二人も…魔導師なんだよなぁ。
魔導師と仲良くすることは出来ない。けど、その力を利用することは厭わない。
と言うより…利用出来るものは何でも利用する主義なんだろうね。
「力を持つ者に権利など与えるべきじゃない。魔導師に好き勝手させているお前の国は、いずれ魔導師に乗っ取られる羽目になるだろうよ。…いや、もう既にそうなってると言っても過言じゃないか」
じろり、とナツキ様は私を睨んだ。
うっ…。その視線が痛い。
私はルーデュニア聖王国を乗っ取るつもりなんて…全くないんだけど…。
「魔導師が国を支配すれば、いずれアーリヤット皇国にも牙を剥くだろう。そうなる前に魔導師を正しく管理し、力を制限する必要があるんだよ」
「その為に、ルーデュニア聖王国に攻撃を仕掛けたのですか。その為にあのような非人道的な条約を考えたのですか」
「他に理由があるのか?」
…ということは。
これが、ナツキ様の真意…。
…では、ないよね。
「…本当にそれだけが理由ですか」
「何?」
「私のことが憎いから…私と、この国が憎いから…復讐しようとしているだけじゃないのですか」
厳しい声で問い詰めると、ナツキ様の目の色が変わった。
こ、怖い。
明らかに、ナツキ様の逆鱗に触れてしまったようだ。
「国の問題と、私達兄妹の問題は別のものです。私を憎むのは構いません。でも国民を巻き込むような真似は…」
「…黙れ。それ以上喋るな」
「魔導師を憎んでいるのも、それが理由なのではないですか。ルーデュニア聖王国が親魔導師国家というだけで、対抗する為にわざと魔導師排斥論者を、」
「黙れっ!」
ひぇっ。
ナツキ様の怒りを宿した目は、とてもじゃないが妹に対するそれではなかった。
親の仇。親の仇を見る目だよ。どう見ても。
同じ親のもとに生まれた兄妹なのに。
国と国との話し合いの最中に怒号を飛ばすなんて、尋常じゃないよこれ。
殴り合いが始まるんじゃないかと、私は内心酷くハラハラしていた。
や、やっぱり羽久に一緒に来てもらった方が良かったんじゃない。
いざとなったら羽久に時間を止めてもらえば、殴り合いの喧嘩だけは防げるから。
「知った風な口を利くな。決闘で勝ったからと言って良い気になるなよ。この程度は想定内なんだ。既に次の矢は用意されて…」
次の矢?
私とフユリ様が揃って首を傾げ、問い詰める前に。
「皇王陛下」
「それ以上は」
ずっと沈黙を守っていたハクロちゃんとコクロちゃんが、ナツキ様を制した。
二人の従者に止められて、ナツキ様はハッとして口を噤んだ。
明らかに失言だったようだ。
惜しかった。もう少し二人が止めるのが遅ければ…「次の矢」というのが何を意味するのか聞けたかもしれないのに。
「どういう意味です。これ以上、我が国にまだ何か…」
「…話す義理はない」
「ですが…!」
「決闘の条件は、『会って話すこと』だったはずだ。尋問に応じるとは言っていない」
取り付く島もない、とはこのことである。
でも、実際その通りだから、深く追及することは出来なかった。
それどころか。
「これで目的は果たしただろう」
話はもうおしまい、とばかりに。
ナツキ様は早々に会談を切り上げ、席を立った。
「待ってください。話はまだ…」
「これ以上、お前と話すことなどない」
そう言って、ナツキ様はさっさと背中を向けた。
あぁ…。全然、話にならない。
「ハクロ、コクロ、行くぞ。もう一秒だって、この国に居るのは御免だ」
最後に、心底不機嫌そうに吐き捨て。
フユリ様の制止も聞かず、二人の従者を伴って、ナツキ様はくるりと踵を返した。
時間にして、僅か10分にも満たない「会談」だった。