―――――――…学院長先生達が、冥界遠征に旅立ってから、およそ一時間が経過した。
この一時間は、まるで地獄のように長かった。
私は、じっとりと汗ばむ両手の拳を握り締めた。
…待っていることしか出来ない自分が、酷くもどかしかった。
今のところ、学院長先生達からは何の連絡もない。彼らがどうなっているのか、誰にも分からない。
果たして、竜の祠は見つけられただろうか。
冥界に住む魔物と遭遇していないだろうか?
私にとっては一時間という時間だけれど、学院長先生方にとってはどうだろう。
冥界の時間の流れは、現世のそれとは全く異なっていると聞いている。
もしかしたら、こちらの一時間は、冥界ではほんの数秒に過ぎないのかもしれない。
逆に、こちらの一時間が、冥界ではまるまる一週間くらい経っているのかも…。
彼らが危険な目に遭っていないかと、気が気ではなかった
…マシュリさんに生き返って欲しい気持ちは、私だって同じだ。
だけど、その為に他の仲間の命を危険に晒すのは、本当に正しい判断だったのだろうか。
考えれば考えるほど、酷く不安になる。
いや…そうじゃない。
仲間が危険な目に遭っているかもしれないのに、ぬくぬくと安全な場所で待っていることしか出来ない自分が、情けなくて仕方ないのだ。
やっぱり、もっと食い下がって…無理にでも、私も一緒に行くべきだった。
そうすれば、待っているだけの苦痛を味わわずに済んだだろうに…。
「…シュニィ、大丈夫か」
じっとりと汗ばんだ私の手に、アトラスさんがそっと触れた。
「アトラスさん…」
「心配なのは分かる。だが、学院長達なら大丈夫だ。信じて待っていれば良い」
…そうですね。
それが根拠のない気休めなのだとしても、アトラスさんにそう言われると、少し気持ちが楽になった。
それに、本当に大変なのは、待っているだけの私ではない。
それを忘れてはいけない。
危険に身を晒しているのは、他ならぬ学院長先生方、遠征メンバーの皆さんであり。
そして、今目の前にいる…。
「…はぁ…はぁ…」
「…吐月さん…」
吐月さんは、手首からポタポタと血を垂らしながら、冥界の『門』を開いていた。
遠征メンバーの帰り道を維持する為に、吐月さんはずっと、彼らが帰ってくるまで、こうして『門』を開き続けていなければならない。
吐月さんにとって、この一時間は、私より遥かに長く感じているに違いない。
本当に辛い思いをしているのは、遠征に行った皆さんと…そして、『門』を開いている吐月さんなのだ。
この一時間は、まるで地獄のように長かった。
私は、じっとりと汗ばむ両手の拳を握り締めた。
…待っていることしか出来ない自分が、酷くもどかしかった。
今のところ、学院長先生達からは何の連絡もない。彼らがどうなっているのか、誰にも分からない。
果たして、竜の祠は見つけられただろうか。
冥界に住む魔物と遭遇していないだろうか?
私にとっては一時間という時間だけれど、学院長先生方にとってはどうだろう。
冥界の時間の流れは、現世のそれとは全く異なっていると聞いている。
もしかしたら、こちらの一時間は、冥界ではほんの数秒に過ぎないのかもしれない。
逆に、こちらの一時間が、冥界ではまるまる一週間くらい経っているのかも…。
彼らが危険な目に遭っていないかと、気が気ではなかった
…マシュリさんに生き返って欲しい気持ちは、私だって同じだ。
だけど、その為に他の仲間の命を危険に晒すのは、本当に正しい判断だったのだろうか。
考えれば考えるほど、酷く不安になる。
いや…そうじゃない。
仲間が危険な目に遭っているかもしれないのに、ぬくぬくと安全な場所で待っていることしか出来ない自分が、情けなくて仕方ないのだ。
やっぱり、もっと食い下がって…無理にでも、私も一緒に行くべきだった。
そうすれば、待っているだけの苦痛を味わわずに済んだだろうに…。
「…シュニィ、大丈夫か」
じっとりと汗ばんだ私の手に、アトラスさんがそっと触れた。
「アトラスさん…」
「心配なのは分かる。だが、学院長達なら大丈夫だ。信じて待っていれば良い」
…そうですね。
それが根拠のない気休めなのだとしても、アトラスさんにそう言われると、少し気持ちが楽になった。
それに、本当に大変なのは、待っているだけの私ではない。
それを忘れてはいけない。
危険に身を晒しているのは、他ならぬ学院長先生方、遠征メンバーの皆さんであり。
そして、今目の前にいる…。
「…はぁ…はぁ…」
「…吐月さん…」
吐月さんは、手首からポタポタと血を垂らしながら、冥界の『門』を開いていた。
遠征メンバーの帰り道を維持する為に、吐月さんはずっと、彼らが帰ってくるまで、こうして『門』を開き続けていなければならない。
吐月さんにとって、この一時間は、私より遥かに長く感じているに違いない。
本当に辛い思いをしているのは、遠征に行った皆さんと…そして、『門』を開いている吐月さんなのだ。