――――――…全身に、冷たい感触が広がっていた。

ふわふわと、まるで無重力の中を漂っているような…。

波のプールに浮かんで、どんぶらこと流されているような…。

上に下に、船に乗せられているように身体が揺れていた。

夢の中にいるみたいだ。

何なんだろう…この感覚…。

…僕、何をしてたんだっけ…?

「…!」

唐突に、僕は自分のやるべきことを思い出して、意識を覚醒させた。

そうだ、寝ている場合じゃない。

僕は冥界にマシュリさんの7つ目の心臓を探す為に来たんだ。

冥界の『門』を潜って、ナジュ君と離れ離れになってしまったんだ。

彼を一人にしちゃいけない。一人にしたら、あの人、死なないのを良いことに、平気で無茶をするんだから。

誰かが隣にいて、無茶するのを止めなきゃいけないんだ。

その為には寝てる場合じゃないと、僕は急いで飛び起きた。

まずはナジュ君をさがっ…。

「えっ…」

飛び起きて、目を開けた僕が見たのは。

驚愕の光景だった。

…水の中。

水の中なんだ。

プールか、海の底みたいな…深い水の中。

…目が覚めた時に、深いプールの底に投げ込まれていたら、誰だってびっくりするよね。

僕もびっくりしたよ。

「どっ…えっ…。ど、どうし…えっ?」

思わずもごもごと呟くと、口の中から泡がポコポコ出ていた。

僕が驚いたのは、水の中にいることもそうだけど。

水の中なのに、普通に自分の発した声が聞こえたということ。

そして、当たり前のように呼吸が出来ているということだった。