「お前がどういうつもりなのかは知らないが、俺はお前と仲良しこよしするつもりはない」

「…」

という、非常に悲しい、つれないお返事。

これ、相当キツい…と同時に、相当失礼なこと言われてるよね…。

妹とはいえ、仮にも一国の国王を相手に…「お前」呼ばわりって。

もうそれだけで国交断絶しかねない状況だけど、フユリ様は激高する様子はなく。

むしろ、これほどきっぱりと拒絶されたことにショックを受けているようだった。

フユリ様としては、これからナツキ様と手を携えて、両国の関係を改善していきたいと思っていたのに。

まだ会談が始まったばかりだというのに、友好を模索する可能性を、こうもばっさりと切り捨てられると…。

…悲しくもなるよね。やっぱり…。

「俺が今日ここに来たのは、決闘の義務を果たす為だ。それ以外の理由などない」

「…はい、分かっています」

「分かっているなら、さっさと用件を済ませてくれないか。…ルーデュニア女王」

いかにも嫌味ったらしく、「ルーデュニア」を強調して言った。

頑なに名前を呼ばないのが、ナツキ様のフユリ様への嫌悪感を如実に表している。

うーん。…気まずい…。

「…」

これには、フユリ様も戸惑っている様子。

無理もない。

とてもじゃないけど、これが久し振りに顔を合わせた兄妹の会話とは思えないもん。

どう見ても、親の仇に会った時の会話。

正直、逃げ出したい気持ちでいっぱいだろうに。

フユリ様は、一瞬だけ目を伏せ。

次に両目を開いた時、彼女の瞳には強い意志と覚悟が宿っていた。

「では、単刀直入にお尋ねします…。あなたは何故、ルーデュニア聖王国を攻撃するような真似をしたのですか」

非常に容赦のない、ド直球の質問であった。

殴りかかってきた相手に、「何で喧嘩売ってきたんだ?」と聞いてるようなもの。

…フユリ様も腹を決めた、ということなのだろう。

「…」

これにはナツキ様も、多少意表を突かれたようだった。

フユリ様だって、覚悟を決められたら強いんだよ。

伊達に、長い間ルーデュニア聖王国を守ってきた訳じゃない。

「ルーデュニア聖王国に攻撃をけしかけてきたこと…。そして、非人道的な魔導師保護条約の締結を迫ったこと…。何故、両国の均衡を崩すような真似をしたのですか」

会談の前、フユリ様はナツキ様の真意が分からない、と言っていた。

分からないなら直接聞けば良いとばかりに、ド直球の質問を繰り出す。

さぁ、これに対してナツキ様はどう答える?

これで言葉に詰まって狼狽えるようなら、ナツキ様の器の大きさが知れるというものだが…。

「均衡だと?…そんなもの、初めから守られているとでも思っていたのか?」

嘲るような口調。

いかにも考えが甘い、と言わんばかりだが…。

「良いか、誰もがお前のように、人間の善意だけを盲信して生きられる訳じゃない。このルーデュニア聖王国が魔導師などという連中を祀り上げている以上、アーリヤット皇国との親交は一切望めないと思え」

「何故、そのような極端な考えになるのです…!魔導師だって人間です。決して分かり合えない存在ではありません」

「人知を超えた力を持つ魔導師が、まともな人間だとでも?笑わせるな」

…えっと。なんかごめんなさい。

ナツキ様の理屈で言うと…私、人間じゃないことになるのか…そっか…。

…ちょっと切ないなぁ。