試しに、溶けた笛に息を吹き込んでみたが。
すー、すー、と空気が抜ける間抜けな音がしただけで、全然鳴らない。
まぁ、そりゃそうだよね。
「これじゃ、仲間に連絡は無理だね」
「えぇ、無理ですね」
「仕方ない。これは持って帰って直すとして…。この場は、自分の足で脱出口を見つけるしかないね」
「はぁ…。他に方法はないですね」
よし、じゃあ頑張ろう。
いつ来るか分からない救助を、じっと座って待っているより。
自分に出来ることをして、動き回ってる方が遥かに気が楽だと思うよ。
ましてや、この状況じゃ、助けなんて期待出来ないしね。
「折角持ってきた遠足のお菓子も、この有り様ですし…」
「ドロドロだね」
「はぁ…気が進まない。でも、命があるだけマシですね。まずは、現在地の確認からしましょうか」
と、ルイーシュ。
「分かるの?現在地」
「さぁ、全く。ただ、冥界の何処かってことは確かですね」
だよね。
現世でこんな場所、見たことないし。
「冥界に現世の常識が通用しないのは百も承知ですが…。それにしたって、変な場所ですね…。何なんですかね?これ」
ぶにぶに、とルイーシュは粘液まみれの壁を指でつっついていた。
それ、触って大丈夫なの?
「まるで、そう…。中年太りのおっさんの贅肉みたいな感触ですね」
なかなか的確な例えだね。
「まずは、進むべき方向を確認したいですね。前に行くか、後ろに行くか…ですが、どっちにします?」
「前とか後ろって分かるの?」
「見たところ、ここ、一方通行みたいじゃないですか」
…確かに。
左右は壁で、進めるのは前方か、後方だけ。
前方はやや下り坂気味で、後方はやや上り坂になっている。
下り坂の方が暗く、上り坂の方が少し明るいようにも見えるけど…。どっちみち暗いから誤差だね。
「登るか下りるか、どっちにします?」
「こういう時は、上る方が良いんじゃなかったっけ」
山で遭難したら、下るんじゃなくて登れ、って聞いたことがある。
少なくともここ、山じゃないけどね。
「じゃあ、登ってみましょうか。…出口、向こうにあれば良いですけど」
ぶよぶよする、粘液まみれの床を踏みしめ。
僕とルイーシュは、何処に繋がっているのか分からない上り坂を登り始めた。
すー、すー、と空気が抜ける間抜けな音がしただけで、全然鳴らない。
まぁ、そりゃそうだよね。
「これじゃ、仲間に連絡は無理だね」
「えぇ、無理ですね」
「仕方ない。これは持って帰って直すとして…。この場は、自分の足で脱出口を見つけるしかないね」
「はぁ…。他に方法はないですね」
よし、じゃあ頑張ろう。
いつ来るか分からない救助を、じっと座って待っているより。
自分に出来ることをして、動き回ってる方が遥かに気が楽だと思うよ。
ましてや、この状況じゃ、助けなんて期待出来ないしね。
「折角持ってきた遠足のお菓子も、この有り様ですし…」
「ドロドロだね」
「はぁ…気が進まない。でも、命があるだけマシですね。まずは、現在地の確認からしましょうか」
と、ルイーシュ。
「分かるの?現在地」
「さぁ、全く。ただ、冥界の何処かってことは確かですね」
だよね。
現世でこんな場所、見たことないし。
「冥界に現世の常識が通用しないのは百も承知ですが…。それにしたって、変な場所ですね…。何なんですかね?これ」
ぶにぶに、とルイーシュは粘液まみれの壁を指でつっついていた。
それ、触って大丈夫なの?
「まるで、そう…。中年太りのおっさんの贅肉みたいな感触ですね」
なかなか的確な例えだね。
「まずは、進むべき方向を確認したいですね。前に行くか、後ろに行くか…ですが、どっちにします?」
「前とか後ろって分かるの?」
「見たところ、ここ、一方通行みたいじゃないですか」
…確かに。
左右は壁で、進めるのは前方か、後方だけ。
前方はやや下り坂気味で、後方はやや上り坂になっている。
下り坂の方が暗く、上り坂の方が少し明るいようにも見えるけど…。どっちみち暗いから誤差だね。
「登るか下りるか、どっちにします?」
「こういう時は、上る方が良いんじゃなかったっけ」
山で遭難したら、下るんじゃなくて登れ、って聞いたことがある。
少なくともここ、山じゃないけどね。
「じゃあ、登ってみましょうか。…出口、向こうにあれば良いですけど」
ぶよぶよする、粘液まみれの床を踏みしめ。
僕とルイーシュは、何処に繋がっているのか分からない上り坂を登り始めた。