…これが、もしもRPGゲームだったら。

ここでセーブ推奨ですね。

絶対何かが出てくる。中ボス以上のモンスターが。

しかし、それはRPGゲームではないし、セーブもロードも出来ないので。

ノーセーブで挑むしかないんですよね。

ただし、残機だけは無限ですから。僕だけ。

よし。一気にヌルゲーと化しましたね。

…って、冗談はそこまでにして。

「無人島…だと思ってたんですが、そうじゃなかったみたいですね」

「うーん。これは明らかに、人が作った建物だねー」

少なくとも昔は、ここは有人島だった訳だ。

建物はすっかり荒れ放題で、崩壊した天井から空が見えている有り様だが。

柵の内側には、ガラスの破片やコンクリートの瓦礫が散乱していた。

「何の建物だったんでしょうね…?」

「学校っぽいけど…。こんなところに学校があるとは思えないし…。病院とか?」

「いや、こんなところに病院があるのもおかしいのでは…?」

「うーん。確かに」

こんな隔離された場所に…島の中央に隠されるように…。

そもそも、冥界に学校とか病院とか、あるんですかね?

魔物が学校に行って勉強したり、病院で治療を受けている姿を想像し。

思わず吹き出しそうになったのは、僕だけではないと思う。

…あります?そんなこと…。

「入ってみる?建物の中」

「良いですけど、僕を先頭にしてください」

「え。何で?」

「建物が崩れかけてるんで。もし床が抜けたり天井が落ちてきたら怪我するでしょう?」

僕は不死身だから、建物の倒壊くらいじゃ何ともないけど。

すぐりさんに怪我されたら困るんで。

「あー、成程。じゃー遠慮なく、ナジュせんせーを囮に使うよ」

「はいはい、宜しくお願いします」

物分かり良くて良いですよね、すぐりさんは。

これが天音さんだったら、ここで一悶着ですよ。

ナジュ君だって怪我したら困るんだから、とか何とか言われて。

やっぱり、天音さんはお人好し過ぎるんですよ。

折角不死身の肉体を持ってるんだから、踏み台に使うくらいで良いんです。

そりゃあ僕だって、死にはしないけど、怪我すればそれなりに痛いですよ?

痛いのは得意ですが、好きな訳じゃない。

でも、少なくとも、自分以外の仲間が怪我するより遥かにマシなんで。

遠慮なく踏み台にしてください。

「じゃあ、入ってみますか…。玄関って何処ですかね?」

「そこ、壁が崩れてるところから入れそうだよ」

おっ、本当だ。

じゃ、行ってみましょうか。