「それにしても、本当に不気味ですね、ここ…」

「うわー、気持ち悪っ。見てよ、あの木」

「うわぁ…」

すぐりさんが指差した大木には、木の幹にも葉っぱにも、赤黒い斑点がびっしり浮き出ていた。

何ていう植物なんですかね?これ…。キモッ…。

現在僕とすぐりさんは、島の中央を目指して歩いていた。

何か見つかれば良いな、くらいの気分で歩いていたけれど…。

段々と…雲行きが怪しくなってきたような気がする。

空模様のことじゃないですよ。

何と言うか…空気…って言うんですかね。

空気がどんよりと重くて、息をするのが苦しいほどだ。

「すぐりさん…気づいてます?」

「なんか…気持ち悪い感じがするね。上手く言えないけど」

そうですね。気持ち悪い…。

胸の奥がざわざわして…肌がピリピリするような、そんな気持ち悪い感触。

何なんでしょうね、これ…。

自分の中の第六感が、これはヤバいと本能的に警告している。

「…何かありますね、これ…。多分」

「何かって何?」

「いや、何かは分かりませんけど…」

言葉に出来ない何かですよ。

「僕が」と言うより…僕の中にいるリリスが…。

「ナジュせんせーこそ、気づいてる?」

「何にですか?」

「植物だよ」

そう言って、すぐりさんは地面を這っている赤黒いツルのような植物を指差した。

「この島の植物、どれを見ても現世のものとは違ってて、気持ち悪いけどさー…。島の中央に近づくにつれ、植物の奇形度が上がってる」

え、本当ですか?

言われてみれば…。浜辺の近くに生えていた植物とは、色も種類も異なっている。

より気持ち悪く、より不気味な色になってる。

そこら辺に落っこちてる落ち葉一つを取っても、浜辺近くに落ちていたのは、精々ハンカチくらいの大きさだったのに。

ここに落ちている葉っぱは、すぐりさんの持ってる風呂敷包みくらいの大きさで、しかも一枚一枚の葉っぱが厚い。

その葉っぱが、ぐんにゃりとねじ曲がっている。

…まるで、奇形の植物ですよ。

「気づきませんでした。さすがの観察力ですね」

「植物はいっぱい生えてるのに、動物の死骸も見つからないのが逆に不気味だねー」

島の中央に近づいてきても、やはり生き物の気配はない。

まるで、世界に僕とすぐりさんしかいないみたいだ。

ホラー映画みたいな展開だなぁ…。

…すると。

すぐりさんが、突然ピタッと足を止めた。

え、ちょ、何ですか。

「…何か見つけました?」

「…あそこ、見える?建物がある」

「えっ」

釣られて、すぐりさんの指差す方向に目を凝らしてみると。

ここまで、生き物の気配も、ましてや人がいる形跡なんて全くなかったのに。

島の中央で僕達を待ち受けていたのは、半壊した柵に囲われた、学校の校舎みたいなコンクリートの建物だった。

…ここ、無人島じゃなかったんですか?