…うわー…。

またうわーって思っちゃった。でも、そりゃ思いますよ。こんなもの見たら。

体感、ほんの30分ほど前にもらったばかりなのに。

大昔の骨董品みたいになってる。

「海水で錆びた…にしても、こんな僅かな時間でこれほどにはなりませんね」

「そもそも、俺達は濡れてないしねー。海水で錆びたと言うより、けーねん劣化で錆びたって感じ」

良いこと言いますね、すぐりさん。本当にそんな感じ。

冥界に時間の流れは、現世のものとは違う。…と、リリスが言っていた。
 
恐らくそのせいだろう。この魔法道具が錆びてしまったのは。

試しに息を吹き込んでみたけど、ピーともうんともすんとも鳴らない。

どころか、力が入ったせいか、吹き口がボロッと崩れ落ちた。

あぁ…。笛、崩壊。

これじゃあ、仲間を呼ぶどころじゃないですね。

僕とすぐりさんの笛がこんな有り様じゃ、他の仲間達も同じことになっていてもおかしくない。

「…どうやら、簡単に合流させてはもらえないようですね」

「どーする?やっぱりイカダでも作って、無人島脱出する?」

「あるいは、下手に動かず合流の機会を待つか…」

これが通常の遭難だったら、下手に動かず、その場で救助を待つのが鉄則ですけど。

…生憎、今は悠長に救助なんて待ってる場合じゃないんですよね。

かと言って、今から無人島脱出用のイカダを作るのも…。

僕達の目的は、竜の祠を見つけることと、はぐれた仲間と合流すること。

冥界の無人島を脱出することではない。

目的を履き違えて、時間を無駄にするのは馬鹿らしいですよ。

…じゃあ、ここは3つ目の選択肢…。

「探索してみましょう。無人島探索」

「それで、何か見つかるの?」

「さぁ?でもイカダを作るよりは、この島を攻略したいですね、僕は」

何もないってことはないと思うんです。

野生の勘ですけど。

「ふーん…?」

「付き合ってくれます?すぐりさん」

「いーよ。今は一人にならない方がいーだろーし」

じゃあ、宜しくお願いします。

僕はすぐりさんと共に、浜辺から、もう一度ジャングルに移動した。