…このお墓、墓石に刻んである文字って…もしかして。

「何だよ。何か分かったのか?」

「…数字…」

「は?」

「これ、墓石の一行目に書いてある単語…。これって、私達の言葉で言う…数字なんじゃないかな?」

「…数字?」

順番に並んでいる墓石、その一番上に刻まれた文字には、法則性があった。

例えば私達が数を数える時って、正の字を順番に書いていくでしょう?

それと同じように、この墓石に刻んである文字も、段々と文字数が増えていっている。

墓石は所々崩れ、判別出来ないものもあるから、確かなことは言えない。

ただそんな気がしているだけで、本当は偶然なのかもしれないけど…。

「成程、数字か…。ってことは、こいつらは名前じゃなくて、個体を番号で識別してるってことか…?」

「…その可能性は高いね」

「へぇ。さすがだな、そんなことが分かるとは…」

いや、単なる閃きであって、確かな証拠がある訳じゃないから…。

…しかも。

「…とはいえ、それが分かったから何だ、って話だが」

「うっ…」

…ジュリス君の言う通り。

墓石の解読なんかしたって、意味ないんだよね。

「俺達は何も、魔物の生態を調べに来た訳じゃないんだぞ」

「そ、そうなんだよね…」

魔物もお墓を作る文化があるんだとか、墓石に数字を刻む習慣や、文明があったんだとか。

それはそれで興味深いけれど、でも、今回は冥界研究の為にやって来た訳じゃない。

目的を見失っちゃいけない。

「竜の祠を探さないとね…」

「その前に、ベリクリーデ達との合流が優先だな」

その通り。

私も、羽久のことが気になる。お墓のことより遥かに。

「大丈夫かな、羽久…。今、何処にいるんだろう…」

「…そんな時の為に、コレなんじゃないのか?」

え?

ジュリス君は、ポケットから「それ」を…ここに来る時、シュニィちゃんが渡してくれた魔法道具を取り出した。

そうだ。それがあったんだった。使わなきゃ。

こんな時の為に使うんだよね。

…しかし。

「…!これ…」

ジュリス君が目を見開き、続けて私も、自分のポケットから同じものを取り出した。

「…!」

その変わり果てた状態を見て、私も思わず言葉をなくしてしまった。