それにしても、改めて見てみると、この場所…。

「ここ、どの辺なんだろうな…。少なくとも、ここに竜の祠はなさそうだが…」

「…」

「見渡す限り、ずっと墓地だな…。これほど広い墓地が、長いこと手入れもされず放置されてたのか…」

「…」

「冥界にも、埋葬する、墓を作るっていう文化があったんだな。相当知能の高い魔物なんだろうな…」

「…」

「…なぁ。さっきからあんた、何で無言なんだ?」

ひょえっ…。

そ、そう聞かれても…。

「つーか、さっきから何でくっついてきてんだよ」

「ふぇっ…」

私は先程から、ずっとジュリス君の背中にくっついて、ジュリス君の背後に隠れるようにして、そろそろと歩いていた。

「鬱陶しいから離れてくれ」

「うぅっ…」

「何なんだ?さっきから…」

だ、だって…。

むしろ、何でジュリス君はそんなに冷静なの…?

「だ、だって…。い、一緒にいないと…くっついてないと、怖いでしょ?」

「は?何が?」

「な、何がって…。…お墓…」

「…」

ジュリス君は怪訝そうな、呆れたような顔でこちらを見ていた。

やめて。そんな目で見ないで。

「お、お墓なんだよ?しかも、魔物のお墓…!魔物のお化けとか…魔物のお化けとかが出てきたらどうするのっ…?」

「どうもしねぇよ。逃げるなり、戦うなりすれば良いだろ」

何を当たり前のことを、と言わんばかりのジュリス君。

強っ…。

「…あんた、イーニシュフェルトの里の賢者ともあろう者が、幽霊にビビってんのか?」

「ぎくっ…」

「あのなぁ…」

だ、だって。

私は、思わず涙目だった。

「誰だって、賢者だって、お化けは怖いよ…!だってお化けなんだよ…!?」

お墓と言えば、お化けの宝庫みたいなものだよ?

ひゅーどろどろ、ってお化けが出てきたら…。

「あんた、死体を操るネクロマンサーとも戦ったんだろ?アレに比べりゃ、幽霊なんて可愛いもんだろ」

「そっ…!それは…べ、別物だよ…」

「そうか?生きてる人間以上に恐ろしいものなんて、他にはいないと思うけどな」

「…」

ジュリス君。君は大人だよ。

実は、私より年上だったりしない?

私より遥かに、何倍も肝が据わってる。羨ましい…。

「ビビってる場合じゃないだろ。目的を忘れるなよ」

「うぅっ…。そ、そうだね。わ、私もジュリス君を見習って、心を強くもっ、」

と言いかけたその時。

お墓の影から、バサハサバサッと音がした。

「ひぇぇぇ!」

「うわっ!ちょ、しがみついてくんじゃねぇ」

「だ、だって今!バサバサッて!バサバサッて音が!」

「別に…。カラスか何かだろ?」

「ここ冥界だよ!」

「あぁ、そうか…」

カラスはいないよ。つまり、さっきの音の正体は…!

きっと、お墓を荒らした私達を恨んだお化けが、