…仕方なく。

私はリュックサックの中身のチョコを、お墓に埋めた。 

チョコのお墓が出来るなんて…。悲しい。

「食べてあげられなくてごめんね…。生まれ変わったら、また美味しいチョコになって、私のもとに戻ってくるんだよ…」

「…」

チョコのお墓に優しく語りかける私を、ジュリス君は白い目で見ていた。

やめて。その目。

「…あんたも大概、頭のネジイカれてんな…」

ボソッ、と呟く声が聞こえた…ような気がしたけど。

きっと気の所為だね。うん。

「って、そんなことより…」

「そんなことって…。チョコのお墓は大事だよ」

「その前に、俺達がまずこの墓場を脱出しないと。チョコを埋めるどころか、俺達の骨まで埋められかねんぞ」

あっ…。そうだった。

ジュリス君、君、なかなか上手いこと言うね…。

「早いところ竜の祠を探して…。それから、ベリクリーデ達とも合流しないと」

「う、うん。そうだね」

危うく忘れるところだった。本来の目的。

チョコのことは残念だけど、チョコのことは残念だけど…!…今回は諦めるしかないだろう。

帰ったら、またいくらでも食べられるよ。きっと。

「…仕方ない。名残惜しいけど、そろそろ行こうか…」

「あぁ。行くぞ」

ごめんね、チョコ達。さようなら。

心の中で別れを告げて、後ろ髪を引かれるような思いで、チョコのお墓に背を向けた。