晴斗は極めつけに優しい笑顔になると、桃井さんの耳元でささやいた。

「俺の方から言わせてもらうよ?桃井。『俺につきまとうのやめてよ』」

もしかして晴斗と雪斗は、このやりとりを最初から見てたんだろうか。
皮肉たっぷりのその言葉に、桃井さんは声を震わせる。

「ひどい。そんなひどいこと言うなんて……晴斗くんらしくない……!」
「逆に聞くけど、桃井って俺の何を知ってんの?」

うっ、晴斗、めちゃくちゃ怒ってる……。

「俺の好きな子のことも、どんな時に怒るのかも。甘いもの嫌いなことすら知らないでしょ?そんな桃井が俺らしくないって言うの、何?」

桃井さんは、もう青ざめていた。
周りの子たちも、状況が色々変わりすぎて、すっかり勢いをなくしている。

晴斗はさらにたたみかけて、桃井さんを打ちのめそうとしている。
いくらなんでもちょっとやりすぎだ。

「晴斗。もう大丈夫だから。私叩かれてもいないし、たぶん誤解も解けたし」
「華、甘すぎ。徹底的にやらなきゃ、こういうのは」
「やりすぎは良くないよ。もう良いから」