「あっ……冬木兄弟……」

女子たちがみんな、動揺している。
中でも桃井さんはすごく顔色が悪い。
うかがうような上目づかいで、晴斗を見ている。

晴斗は桃井さんの前まで歩み寄って、にこにこしながら言う。

「あのさ?誰かを好きになるのは、確かにその人の自由だと思うんだけど。でもちょっと違くない?嘘つくのは」
「う、嘘なんて……わたし……。晴斗くんのこと好きなだけで、そんなこと……」

そう言う桃井さんは大きな目をうるませている。
可憐で、健気に見える。
それが本当の顔なのかどうかは、わからないけど……。

「岡村先輩に確かめてきたけど、華のことは知らないって言ってたよ」

こともなげに晴斗が言う。
その時私は見てしまった。
桃井さんが気まずそうに目をそらすのを。

この子、やっぱり嘘ついてたんだ。
私はそう確信する。


「それにさあ、俺の方なんだよね。華に頼んで一緒にいてもらってるの」

女子たちがちょっとどよめいた。
えっ、なんか誤解を招きそうな言い方だな!?
それに頼まれた覚えもない。

雪斗だって無言で晴斗のこと睨んでるんですけど!