私が色んな意味で言葉を失っていると、女子たちがきつい口調で次々と詰め寄ってきた。

「聞いてる?わかったら、もう晴斗くんに近づくのをやめて、あと桃井にちゃんと謝って」
「謝れって言われても……」

晴斗に近づくのをやめるかどうかはともかくとして。
やってもいないことを謝ることはできない。
正直にそれを伝えるしかない。

「私、謝れない。先輩とは付き合ってないし、桃井さんにいじわるしようと思ったこともないから」
「なっ……この嘘つき!」

女子の1人が、手を振りあげた。
叩かれる……!

思わずぎゅっと目をつぶった。
パシンという音が響く。


……でも、なぜか、叩かれることはなかった。


「……?」

おそるおそる目を開けると、雪斗が立っていて。
女子の平手を受け止めていた。
合気道を小学生の頃からやってる雪斗は、かなり反射神経が良いのだ。

雪斗、真顔がめちゃくちゃ怖いよ?
すごい心配してくれてたんだね、私のこと。
それがわからない女の子たちは、睨まれてるように思ったのか、みんな怯えている。

「華……気をつけろって言ったのに、まったく……」

そして、現れたのは、雪斗だけじゃない。

「ねえ、どういうこと?これ」

話題の本人、晴斗もその場に立っていた。
とびっきりの笑顔(=最高に機嫌悪い顔)で。