「やばい…ここどこ…?」

雨が降った入学式の日、私は絶賛迷子中だった。

早く教室に向かわないといけないのに、今いる場所も、どこに教室があるのかも、全然わからない…!

自分は方向音痴だと薄々気付いてはいたけど、ここまでなんて…。

「〜〜でさ!」

「はぁ?お前まじぃ?!」

「わっ」

後ろから人が来るのに気が付かず、押されてその場に転んでしまう。

教室には着けないし、転ぶし、雨だし…。

じわ、と涙が滲みそうになった、ちょうどその時だった。

「…君、大丈夫?新入生?」

低めの落ち着いた声が、鼓膜を揺らしたのは。