家の扉を開け、外を出ると雨の日特有の、湿っぽい匂いがした。そういえば、さっき見た天気予報のお姉さんも午前中から雨が降るって言ってたような。

私、天宮夏芽(あまみやなつめ)は、お気に入りの淡い紫の傘を手に取って、学校へ向かう。

少し歩いているとパラパラと雨が降ってきた。最初は少なかったのが、段々と増えていき、傘をさす。

パタタ、と雨と傘が小気味の良い音を立てた。

雨はあんまり嫌いじゃない。

友達は髪がうねる〜、とか、ジメジメする〜とか言って雨を嫌っているけど、まぁそこには同感だけど。

この雨の日の独特な匂いも結構好きだし、街が色んな傘の色で彩られていくのを見るのもなんだか特別感があっていいなぁ、と思う。

それに───。