私は家に帰ってからも、ボーッとしていた。

母親が何度も話しかけてきている。

いつもの私なら、ここで言い返すなんて術は持っていない。











「……母様、」

「どうして無視をするの?」

母親の甲高い声が耳の奥に響く。







_意思は、貫くためにある。


あの日、わたる様は私にそう言ってくれた。

















「母様、私は、私はもう、あなたには従いません。」

母親は絶句した。

「は、はぁ?アンタ、何、言って」

「あなたの意思は、私の意思では無い。私は、私がやりたいと思ったことをやります。」

「……。」

「……母様、父様にもお伝えください。私は、私の人生を歩みますと。そして、私を育て上げてくださり、ありがとうございます。」






私は、自分の荷物を1式まとめると、すぐに家を出た。


















「お世話になっております。脳神経外科大山です。…家庭の都合で…今月付で、退職させて頂きます。……いえ、お金は必要ありません。……はぁ、そうですか、では、そちらだけ取りに伺います。はい。突然申し訳ございません。はい。よろしくお願いいたします。失礼します。」




私は、電話を切ると、カバンにしまった。

これで良かったのだ。

私は、本当にやりたいことが見つかった。

それをこれから、貫いていく。


















「いけない、笑顔笑顔」









わたる様が、悲しんじゃう。