しばらくすると、部屋に粥が運ばれてきた。

「…すまん。水を入れすぎたようだ。」

新庄は、盆の上に乗った茶碗を見ながらそう言った。

「…あの、……」

「ん?どうした?」

「……いつも、お食事は…わたる様が、?」

1人の時や心の中ではあれだけ上手くいったシュミレーションが、いざ相手を目の前にすると上手く伝えることが出来ない。

だけれど、やはり彼は私が話すことができるまで待っていてくれていた。

「うむ……それがな、モモコ殿。全責任を負うと言っておきながら恐縮であるが、食事だけはスミに手伝ってもらっていた。……私ひとりでやってみたのだが、……火加減を見誤ってな。2度目は、水加減を。3度目には黒い物体が出来上がった。」

「…4度目以降から、住吉に炊飯のみ手伝わせていた。すまない。」


「いえ、謝ることありません。……」

私は心の中で、私のために何度も試行錯誤する新庄を愛おしく思った。
そして、彼はとてつもない不器用だということが確定した。

「……ありがとうございます。」

新庄は、私に近づくと私の頭にポンと手を置いた。

「器用でなくてすまない。」