「うわっ!」

私は飛び起きた。
身体中が汗でびしょびしょだった。

「…夢…か……。」

妙にリアルな夢だった。
もしかしたら、私が無意識に消した過去の記憶だったのかもしれない。

頭痛は眠る前と比べると幾分か軽減していた。

「モモコ殿!叫び声がしたようだが、!」

隣室にいた新庄が間髪入れずに飛んできた。

「…だ、大丈夫です、悪い夢見てて」

「…うむ…悪夢か……」



「…あの、……」

「…ん?」

「汗、かいちゃったので……その……着替えたいんですけど、」

「承知した。しばし待たれよ。着替えを持って来る。」

新庄は、早足で部屋を出ていった。

自分の気持ちをこうして誰かに伝える経験は初めてだ。
これまでは全ての判断が親にあり、自分で考えて物を言ったことが無かった。

学校の入試では、好成績の者には待遇が着き、世間一般で言う入試らしいことは経験した事がなかった。



私は自分の手のひらを見つめる。

自分を取り囲んでいた大きく分厚い壁が1つ、破られたような気がした。

壁が大きくて分厚くても、勇気を振り絞って触れてみれば、案外軽いものなのかもしれない。