「……ワタシの宿命(しゅくめい)なの。生まれたときからの」

「宿命?」

「ワタシは〝最強に可愛(かわ)い〟見た目に生まれた。だから、中身も〝最強に可愛く〟なきゃいけないの」


 べつにそんな義務(ぎむ)はないのに、と思った。
 でも、彼女の人生とも言えるその努力を、軽い言葉で一蹴(いっしゅう)してしまうのは無礼千万(ぶれいせんばん)だ。


「あ〜、メンドクセーー」


 わたしは理解(りかい)に苦しむ。あんなマネしたって、どうせ何にも残らない。あんな()けの皮、すぐに()がれ落ちて、悲しい結末がまっているのは目に見えている。


 努力なんて無駄(むだ)だ。どれだけ死ぬほど頑張(がんば)って、目標にむかって一心に手を伸ばし続けても、いとも容易(たやす)(くだ)()って、水泡(すいほう)()す。


 奇跡的(きせき)に目標を(つか)んだとしても、人の心は季節と同じだ。

 あっという間に移ろって、姿を変える。すぐに他の何かに鞍替(くらが)えしてしまう。


 この世の中は、諸行無常(しょぎょうむじょう)である。


 努力なんて、無駄(むだ)なんだ。