叔父の健二や従姉妹の玲香とは血の繋がりがあるとはいえ、葬儀の場で『バチがあたった』などと言い放った彼女たちを家族とは思えない。

晴臣と家庭を築いていくのなら、もう彼らに怯えながら生きていたくはない。

それならば、ただ晴臣に守ってもらうのではなく、自分から叔父一家に決別を告げるべきだ。

桐生自動車と秋月工業の取引が終わるというのは意外だったし、叔父がそれを知っているのかは不明だが、晴臣が言うのだから間違いないだろう。

会社同士の繋がりが切れるのならば、萌と叔父一家の縁を切るのも難しくはないはずだ。

(もうこれっきりにしてほしいって、私の口からちゃんと話そう)

秋月工業に手伝いに行くのも、彼らの言いなりになるのも、家族でいることすら、もう終わりにする。

そう決意した萌は秋月工業へ向かった。父がいた頃の工場とはかなり様変わりしていて、今では見知った顔はほぼいない。

入口を入ってすぐ右手に事務所がある。陽一はこの事務所にデスクを置いていたが、健二は奥の応接室だった場所を社長室にして、そこで仕事をしている。