「きゃっ」

彼が迷いのない足取りで向かったのは寝室で、普段は萌も使っているベッドなため見慣れているはずなのに、急に妙な存在感を醸し出している。

晴臣は宝物を扱うようにそっと萌をベッドに横たえると、自身も萌に跨るようにベッドに乗り上げた。

熱い視線で見下ろされ、ドキドキと心臓が壊れんばかりに高速で脈打つ。なにか言わなくてはと思った時、浮かんだのは今朝の晴臣との約束だった。

「あっ、ハンバーグ」

ベッドの上で見つめ合う状況にそぐわぬ発言にもかかわらず、晴臣は呆れたり咎めたりはしなかった。

「うん、俺がリクエストしたのにごめん。でも今は萌がほしい」

そう言う晴臣の瞳には、萌にもわかるほどの熱情が浮かんでいる。

萌にとっては初めての経験だが、不思議なほど怖いとは思わなかった。

晴臣に求められている。それがただ幸せで、萌は同じくらいの熱い眼差しで晴臣を見上げる。