この感情が純粋な恋心なのか、それとも居心地のいい環境を与えてくれた彼を手放したくないだけの打算的な執着心なのか、ずっと自分の気持ちに自信が持てないでいた。
「ここで立ち話もなんですから。ねぇ、萌?」
早く家に上げろと言わんばかりの玲香の視線から守るように、晴臣が萌の肩を抱いて自分の胸に引き寄せた。
ふわりと香る彼のにおいに安心して、泣きたくなるほど胸が締めつけられる。
(打算なんかじゃない。やっぱり私は晴臣さんが好き……)
きっかけはあの家から離れる機会をくれたことかもしれない。しかし、だからといって誰でもよかったわけじゃない。
強引な優しさで萌を導き、意思を尊重してくれる。日々のコミュニケーションを疎かにせず、ちょっとした話にも耳を傾けてくれる。両親の代わりに、これから毎年誕生日を祝うと約束してくれた。
そんな晴臣だからこそ急速に惹かれ、生まれて初めての恋に落ちたのだ。
萌が彼の胸の中から見上げると、晴臣は大丈夫と言わんばかりに柔らかい笑顔を向けた。そして、視線を玲香へと移す。