そこに、すかさず割って入ってきたのは玲香だ。

「晴臣さん! お久しぶりです。近くに来たものですから寄ってみたんです。萌がご迷惑をおかけしてないか心配で。この子はとろいし気が利かないし、なにより女性としての魅力も欠けていて……ご不満もあるでしょう?」

彼女は晴臣の登場に嬉々として話し始める。

『女性としての魅力も欠けている』という玲香の発言に、ギクリと身体が竦んだ。実際に男女の仲になっていないのを見透かされているような気がした。

萌に対する酷い言い草に、晴臣の視線が凍てつくほど冷たくなっているのに気付かない玲香は、彼の腕に触れながら話し続ける。

「そうそう、ここのコンシェルジュサービスにはクレームを言った方がいいですよ。家族だと言っているのに追い返そうとするなんて、ホスピタリティの欠片もないわ。一体どういう教育をされているのかしら」

綺麗にネイルの施された玲香の細い指が彼に触れるのを見て、萌は息苦しさに似た胸の痛みを覚えた。

(やだ、晴臣さんに触らないで……)

そんな考えがよぎった自分に驚き、同時に卑しく感じた。

互いのメリットのために結婚を提案されたに過ぎない関係性のはずが、酷い環境から救われ優しく接してもらううちに、身の程知らずな独占欲を抱いている。