「だいたい地味女の分際でこんなマンションに……って、ちょっと、なによその格好……」

玲香は萌を上から下までジロジロと見ると、悔しそうな顔をして睨みつけてきた。

萌が身につけているものはすべて晴臣に買ってもらったため、すべてハイブランドの商品だ。服はもちろん、靴やバッグ、そして誕生日に贈られた四つ葉のネックレスも、洗練された上質なものばかり。

つい先日、最初に染めてもらった美容院で再びトリートメントをしてもらったばかりの髪は艷やかで、そこでメイクのアドバイスを貰って実践しているため、かなり垢抜けた印象になっている。

なにより、萌自身から発する雰囲気が明らかに違う。

自分を支配しようとする家族に萎縮し、すべてを諦めたような瞳をしてた萌とは別人のよう。幸せそうに買い物袋を持って帰宅した萌を見て、玲香は目を吊り上げて苛立ちをあらわにした。

「萌のくせに……! 早く家にあげなさいよ! せっかく顔を見に寄ってやった従姉妹をもてなすこともできないの?」
「ご、ごめんなさい、すぐに……」

玲香の怒鳴り声に反射的に従おうとするが、晴臣の喜ぶ顔が見たくて買った食材が入ったエコバッグを見てハッと我に返る。