(晴臣さん、喜んでくれるかな)

朝のやり取りを思い出すだけでにやけてしまいそうで、きゅっと下唇を噛んでニヤける頬を引き締める。

エコバッグいっぱいに食材を詰めて帰宅すると、マンションのエントランス前に見慣れた人影が腕を組んで立っていた。

「遅い! どうせ大した仕事もしてないんだから定時で上がったんでしょう? さっさと帰ってきなさいよ!」
「れ、玲香……」

なぜ玲香がここにいるのか。

そう考えるよりも前に、久しぶりに聞く萌を罵倒する甲高い声に身体がギクリと固まった。

「家族が住んでるって言ってんのに入れないなんて、このマンションのコンシェルジュはどうなってるのよ! わざわざ来てやったのに門前払いする気?」

玲香は相変わらず派手なハイブランドのワンピースを着ており、髪は以前のように金髪に近い明るい色に戻っている。

待たされて苛立っているのか、高級住宅街にそぐわぬ金切り声で萌を責め立てた。