(ちっ近い……!)

以前は緊張しすぎて心臓が痛かったけれど、今はドキドキしすぎて心臓が痛い。同じ痛みでも甘さが加わった分、なんだか落ち着かない。

恋愛偏差値が底をついている萌にも、彼に対する感情が〝恋〟かもしれないとなんとなく感じている。

晴臣と結婚を前提に同居しているのは互いのメリットのため。そう理解しているのに、どうしたってときめかずにはいられない。

真っ赤に染まっているだろう顔を両手で隠すと、晴臣は小さく笑いながら萌の頭をぽんとたたいた。

「萌の作るハンバーグ、楽しみにしてる」

こうしていちいちドキドキしているのは萌だけに違いないけれど、「楽しみにしてる」と言われて張り切らないわけがない。

就業後、萌は近くのスーパーに寄ってハンバーグや付け合わせのポテトサラダなどの材料と、旬の桃を使ったチーズケーキを作るための材料を購入した。

彼は料理はもちろん、萌の作ったスイーツも美味しいと言って食べてくれる。もっと喜んでほしくていつも色々と作りすぎてしまい、一緒にそれらを食べる萌はこの二ヶ月で三キロも体重が増えた。けれど元々やつれ気味だったため、今くらいの体型の方が健康的で自分では気に入っている。