「ご両親の代わりに、これからは俺が毎年君の誕生日を祝うよ」

晴臣は後ろから腕を回し、四つ葉のクローバーがモチーフになっているネックレスをつけてくれた。

「俺はおふたりに会ったことはないけれど、萌が自分の誕生日に暗い顔をしているのを望まないはずだ。だから俺は君がなんて言おうと毎年祝うよ。ご両親が萌をこの世に送り出してくれた日だから」

両親は萌に幸せでいてほしい。暗い顔をしているのを望まない。そう断言してくれる晴臣の優しさに、萌は胸が詰まって息が苦しくなる。

本当は、ずっと誰かに誕生日を祝ってほしかった。ケーキもプレゼントもいらない。ただ「おめでとう」と笑顔で言ってほしかった。ずっと両親がそうしてくれていたように。

毎年ひとりでこの場所に来ては、墓の前で「私は大丈夫」と報告していた。

両親が恋しくて堪らない時も、翔子や玲香にどれだけ嫌みを言われても、心配をかけたくなくて決してこの場所では泣かなかった。

けれど今、両親の代わりに誕生日を祝ってくれる晴臣の言葉を聞き、目の奥がツンと痛くなる。