四月三十日。今日は萌にとって特別な日だ。

十年前の今日、両親は中学生だった萌を残し、天国へと旅立ってしまった。

毎年お墓参りはひとりで行っていたが、今年は一緒に行くと言ってくれた晴臣とふたりでやって来た。

墓石を掃除し、花立てに母の好きだった花を活ける。

「萌の両親はどんな人たちだった?」

そう聞かれ、萌は両親の顔を思い出しながら口を開いた。

「仕事一筋の父と、そんな父をサポートする母、という感じです。工場のすぐ隣が実家なので、差し入れをする母にくっついて私もよく遊びに行っていました」

ものづくりに情熱を燃やす父と、しっかり者の母。ひとり娘の萌は、彼らの愛情を一身に受けて育った。

忙しい中でも学校の行事には揃って参加してくれたし、長い休みには三人で旅行もした。食卓にはいつも笑顔が溢れ、金曜の夜には父の友人が仕事帰りに家に寄って食事をしたりと、常に賑やかな家庭だった。

「父は酔っ払うと、よく『ねじはすべてのものづくりの根幹だ』って従業員の人たちと熱く語ってました。地味だけど、なくてはならない仕事だから誇りを持ってるんだって」