それに気付いた晴臣から改めて生活費はカードで払うようにと指摘され、自分で稼いだお金は自分の好きなものを買うようにと言われたのだ。

『自分を甘やかすのも大事だよ』

そう言われても、これまで自分のためにお金を使うことが極端に少なかったせいか、萌には物欲も、これといった趣味もない。

生活に必要なものは先日の買い物で晴臣がすべて揃えてくれたし、と考えた時、あるアイデアをひらめいた。お菓子作りの道具と材料を買い、甘党の晴臣へチョコレートタルトを作ることにしたのだ。

萌は冷蔵庫から綺麗に固まったタルトを取り出し、ひとり分にカットする。

「お菓子ははじめて作ったので、美味しくできてるかはわからないんですけど」

百貨店などに入っているおしゃれなお店で、見た目も味も上質なチョコレートを買おうかとも悩んだ。けれどやはり自分で作ることにしたのは、この部屋にはじめて来た時に彼から作ってもらったホットチョコレートのお礼をしたかったからだ。

そう説明してタルトを晴臣の前に差し出す。