初日の萌の緊張が晴臣に伝わったのか、萌が相手ではそんな気分になれないのかはわからないが、ただ同じベッドで眠るのみ。しかしそれが功を奏したのか、徐々に彼と同じ空間にいるのに慣れてきて、今では身体がガチガチになるほど緊張する場面は少なくなった。

けれど、こうして何気なく頭や髪に触れられたり、近距離で目を合わせて微笑まれたりすると、どうにも心臓が落ち着かなくて困る。

胸に手を当てて大きく深呼吸したあと、キッチンからダイニングテーブルへ作った料理を運んだ。

程なくしてスーツから部屋着へと着替えた晴臣が戻ってくると、ふたりで食事をしながら今日あったことなどを話す。他愛ない日常が、萌にはとても幸せに感じられた。

「タルタルソース、めちゃくちゃ美味い。これも手作り?」
「はい。お口にあってよかったです」
「ごめん、俺料理はあんまりしないからどれだけ手間がかかるものなのかわかんないけど、仕事終わりに作るの大変じゃなかった?」
「揚げ物なので時間はかかりましたけど、いつも美味しいって言ってくださるので手間だなんて思わないです」

料理に感想をもらえるのが嬉しくて、萌は毎日張り切って作っている。

時間的にそれほど手の込んだものは作れないが、晴臣が和食が好きだと知り、レパートリーを増やそうと努力しているところだ。