三年前にお見合いで出会い、結婚の約束をしていたにもかかわらず、萌が酷い言葉で傷付けて別れた相手だ。

そして、双子の父親でもある。

けれど彼は萌が妊娠した事実を知らないまま海外へと旅立った。

この三年間、一度も連絡をとっていないし、彼との繋がりはすべて断ち切ったはずだった。

(どうして晴臣さんがここに……)

あまりの驚きに、動揺で全身に震えが走る。

懐かしさと愛しさ、押しつぶされそうな罪悪感といった様々な感情が溢れ出し、萌はお盆を持ったまま一歩も動けない。

そして萌を見て驚き固まっているのは、田辺の向かいに座っていた晴臣も同様だった。

オーダーメイドであろうグレーの細身のスーツを着こなし、簡素な事務所の応接室に不釣り合いなほどキラキラとしたオーラを纏った彼が、信じられないとばかりに言葉を失ってこちらを見つめている。