そう言いながらも、すでに瞼は半分閉じており、船を漕いでいる状態だ。

朝から見合いに対する極度の緊張と、晴臣からの結婚の提案について慣れないながらあれこれ思考をフル回転したせいで、萌の体力も精神力も限界を迎えていた。

ふわりと身体が倒され、トントンとゆっくりとしたリズムで肩をたたかれると、萌の意識は徐々に夢の中へ引きずられていく。

「片付けは俺がしておく。大丈夫、ここには君を怒鳴りつけるような人はいない。だから安心して眠って」

優しい口調の晴臣の言葉に泣きたいほどの安心感を覚えた萌は、そのまま意識を手放した。


翌日の日曜日。晴臣に誘われて、朝からふたりで家を出た。

萌は昨日着ていたワンピースだが、晴臣は休日らしくラフな格好をしている。前髪を下ろしているせいか雰囲気がかなり違って見えて、カジュアルな装いも似合うのだと感心した。

最初に連れて行かれたのは美容室で、彼が話を通してくれていたらしく、他の人の目に触れないように個室で施術をしてもらえた。