少し考えて、ようやく萌は頷いた。子供の頃、母が作ってくれたチョコクッキーがとても好きだったことを思い出した。

「好き、です」
「じゃあどうぞ。飲んでみて」
「ありがとうございます。いただきます」

萌はふうっと息を吹きかけてから、マグカップに口をつけた。

とろりとした濃厚な味わいだが決して甘ったるくなく、身体全体をあたためて癒やしてくれる。

「……おいしい」

心の底から、そう感じた。

晴臣の家にあるのだから、きっと高級で質のいいものに違いない。けれどそれだけではなく、彼が自分のために淹れてくれたことが、より萌の心に染み入るような美味しさに感じさせたのだ。

思えば母の料理や手作りのお菓子も、とても美味しかった。それは家族を思って心を込めて作ってくれていたからに違いない。