「ごめん。あまりにも慌てるから、つい。じゃあ俺はキッチンにいるから。ちゃんと手当てしておくこと」
「は、はい」

彼は微笑んだまま萌の返事を聞くと、そのままリビングの奥にある対面キッチンへ歩いていった。

真面目に手当てをしてくれようとしたのか、からかわれただけなのかは定かではないが、男性に対し全く免疫のない萌にとって、晴臣がどれだけ穏やかで優しい態度をとろうが緊張してしまう。

(本当に、ここであの人と暮らすの……?)

まるで現実味がなく、お見合いから全部夢だと言われた方がしっくりくる。けれどジンジンする脛の痛みが、これが現実であると教えてくれた。

萌は薬局で買ってもらった大判の絆創膏を貼って傷を覆った後、濃い紫色の痣になりつつある脛に湿布を貼り、取れないように包帯で巻いた。

程なくして晴臣が両手にマグカップを持ってキッチンから戻って来る。