(私は、どうしたい……?)
今のまま、あの家で翔子や玲香に虐げられながら一生を終えるのか。本当にそれでいいのか。
育ててもらった恩義はたしかにある。けれど理不尽に傷つけられ続ける理由など、どこにもないはずだ。
晴臣の問いに対し、浮かぶ答えはひとつだけしかない。
「わ、私は……あの家から出たい」
切実な願いを口にした声は細く震えていた。
ぎゅっと目を閉じて自分の思いを打ち明けた萌の頭に、ぽんとあたたかい手のひらが置かれる。
「よく言った」
おそるおそる目を開くと、優しい微笑みをたたえた晴臣が萌を見つめていた。