晴臣は冷やしていたおかげで多少赤みの引いた萌の左頬を、大きな手でゆっくりと包み込んだ。

「まだ痛む?」
「いえ」
「それなら、あっちに連れて行ってもいい?」

彼の視線の先はベッドルーム。その意味を理解し、ぶわっと顔が赤く染まった。

「今、すごく萌を甘やかしたい気分なんだ」

今日はいつも以上に甘い言葉をくれていたというのに、これ以上甘やかされてはドロドロに溶けてしまいそうだ。

それでも、断るという選択肢は浮かばなかった。

萌が「はい」と小さく頷くと、晴臣は頬に触れていた右手をそのまま背中へ回し、反対の手を膝裏に回して抱き上げる。

何度されても〝お姫様だっこ〟は恥ずかしい。余裕の足取りで歩く晴臣から額や頬にキスをされるのも、恥ずかしさを助長する。

彼の腕の中で縮こまりながら至近距離で見上げると、チョコレートよりも甘い眼差しから、野性味のある鋭い眼差しに変わった。

ベッドに下ろされた瞬間、どちらからともなく目を閉じて唇が重なる。