使い込んだ金の返済よりも、萌や桐生家に対し今後一切近づかないと誓約させる材料として調査し、過去の萌への虐待とも言える扱いについて謝罪させたいとずっと考えてくれていたらしい。

すでに警察には連絡済みとのことで、これから秋月家には家宅捜索が入るだろうという話だった。

「ありがとうございます。私、なにも知らなくて……」
「引き取られた時は中学生だったんだ、知らなくて当然だよ。それに、萌は彼らにきっぱり引導を渡してただろう」

隣り合って座る晴臣がそっと萌を抱き寄せ、優しく頭を撫でてくれる。

「よく頑張ったな」

彼の腕の中はあたたかくて心地よく、知らず知らずのうちに身体に入っていた力がするすると抜けていく。

「晴臣さんがそばにいてくれるから、私は少しだけ強くなれたんです。あの人たちと決別できたのは、光莉と陽太の存在と、晴臣さんが私たちと家族になってくれたおかげです」

守りたい存在がいるから強くなれる。大切にしたい家族がいるから勇気を出して立ち向かえる。

「だから、ありがとうございます。晴臣さん」

身を預けたまま見上げて微笑むと、彼もまた嬉しそうな眼差しを向けてくれる。