「光莉と陽太は?」

晴臣は一旦萌を腕から解放すると、スーツのジャケットを脱いでタイを緩めた。

その仕草は

「私が理恵さんのお部屋に行った時には、ふたりともぐっすりだったんです。そのまま預かるから、夫婦水入らずで過ごしなさいって」
「そうなのか。申し訳ないけど、ありがたいな」
「はい。あの、早速ですけど、さっき叔父さんや叔母さんに話していたのは……」

晴臣が彼らに告げていた内容は、まったく知らない話ばかりだった。

「あぁ。萌のお父さんと田辺社長が以前取った特許権が失効しているのも、秋月社長夫妻が本来は萌にご両親の遺産を引き継がなければならないのも、全部事実だよ」

晴臣は萌をリビングルームのソファへと促し、ゆっくり事の顛末を教えてくれた。

三年前に萌が姿を消したのも、再会したあともなかなか結婚に頷けなかったのも、〝叔父一家がなにか言いがかりをつけてきたら晴臣に迷惑がかかる〟という懸念を拭い去れなかったからだとわかっていた。

だからこそ、その懸念を徹底的に潰すため、彼らについてあらゆる手段を用いて調べたのだという。