『はい、これでちゃんと冷やして。なにかあったらすぐに連絡するから、私にも孫とのお泊まりを堪能させて』

理恵が萌に気を遣わせないよう言ってくれているのが伝わり、素直に甘えることにした。

晴臣が用意してくれた部屋に移動し、ひとり待つこと数十分。パーティーを終えた晴臣が帰ってきた。

「おかえりなさい。お疲れ様でし……わっ!」

部屋に入るなり、彼は萌を強く抱きしめる。

「ただいま」
「早かったですね。もう戻ってきて大丈夫なんですか?」
「うん。父に事情を話してあとは任せてきた」

そっと萌の頬に触れる手は震えていて、やはり罪悪感を感じているのか打たれた本人よりも痛そうな顔をしている。

「助けるのが遅くなってごめん」
「大丈夫です。来てくれてありがとうございました。でも、どうして叔父さんたちが来てるってわかったんですか?」
「あの場にいた警備員が『社長か副社長を出せと客が喚いている』とインカムで小倉さんに連絡があった。それ以降、ずっとそっちの音声を拾ってくれていたんだ。すぐに小倉さんが萌に気づいて俺にインカムを貸してくれたから、やり取りは全部聞いていた」

だからあの時、晴臣は『君は十分頑張った』と言ってくれたのかと納得した。