醜い争いを始めたふたりを尻目に、晴臣は控えていた警備員に視線で合図を送る。すると三人は彼の意図を察して動いた複数の警備員に取り囲まれた。

「今後一切、萌に近づくことは許さない。これからのことは弁護士を通じて連絡をします」

そう言い切った晴臣が警備員に頷くと、秋月一家はホワイエから連れ出されていく。

最後の最後は田辺や晴臣を巻き込んでしまったけれど、彼らに立ち向かい、言いたいことはすべて言えた。

今度こそ二度と会わないであろう三人が肩を落として警備員に連行されていく後ろ姿を、萌はただ無言で見送った。


騒ぎのあと、萌はひとりパーティーを抜けることとなった。

途中で抜けることに申し訳なさを感じたけれど、さすがに真っ赤に腫れた頬のまま挨拶をして回るわけにはいかない。

晴臣は『あんなことがあった直後に萌をひとりにしておけない』と自分もパーティーを切り上げようとしていたが、主催者がいなくなるわけにはいかないと小倉と萌のふたりで必死に止めた。