「未成年後見人は彼女が成人した段階で解消される。その後は萌がご両親から相続した遺産を彼女に引き継がなくてはならないんです。もちろんご存知ですよね?」

晴臣の言葉に、これまで捲し立てて話していた翔子の高圧的な笑顔がピシリと固まる。

「人を雇って財産管理の収支報告書を作らせて提出しているようですが、萌にご両親の遺産は渡っていない。これは業務上横領にあたります」
「じょ、冗談じゃないわ……! なにを今さら――」
「もちろん冗談ではありません。俺はあなた方の萌への仕打ちを許すつもりはない。過去のことだろうとどんな手を使っても必ず追求しますので、そのおつもりで」

後ろ暗いことがあるのだろう、翔子はそれ以上なにも言えず顔を真っ青にして凍りついている。

すると、それまで隣で聞いてた玲香が一気に母親と距離を取るように後ずさった。

「わ、私は関係ないわよ! パパとママが勝手にしたことでしょ!」
「玲香……あなたって子は! あなたのワガママにいくら使ったと思っているのよ! 私立の大学にしか受からないから、仕方なく萌の遺産に手を出さざるを得なかったんじゃない!」
「ちょっと、私のせいにしないでよ! 大体会社の経営がちゃんとうまくいっていれば――」