萌はゆっくりと立ち上がり、こちらを睨みつけてくる三人を真っすぐに見据える。

三年前に決別したつもりだった。けれど言い逃げしただけではなにも変わらない。

自分には守るべき家族がいる。叔父たちにはなにを言っても無駄かもしれないけれど、それでも金輪際かかわる気はないのだと言っておかなくては。

桐生自動車の華やかなレセプションパーティーに水を差したくない。幸いにもホワイエには賓客は見当たらないが、警備員が遠巻きに無線でなにか告げている様子も見える。早く決着をつけなくてはと、萌は自分を奮い立たせた。

「私が晴臣さんと結婚したとして、あなたたちになんの関係があるんですか」
「まずはうちの負債をなんとかしてもらうに決まってるだろう!」
「……どうして晴臣さんにそんなことをお願いできると思うんですか」
「どうして? 私たち家族が困っているんだから、助けるのは当然じゃない! 誰のせいで会社が大変なことになっていると思ってるのよ! 桐生家にとったら、うちが抱えている負債なんて大した額じゃないわ。さっさと話を通してきなさい」

怒りを通り越し、呆れて目眩がしそうだった。きっと同じ理論で萌の両親にも借金の肩代わりを頼み、断られたのを逆恨みしていたのだろう。

萌が反論するのに苛立ちを募らせ、三人はますます苛立った表情をしている。