メイクが崩れていないかを確認し、ドキドキと忙しなく高鳴る鼓動をなんとか落ち着かせて出てくると、会場の受付辺りがなにやら騒がしい。

「いい加減に通してちょうだい! そちらの不手際で招待状が届かなかっただけよ」

今日のレセプションパーティーには現役の大臣をはじめ各界の著名人が来賓として招かれているため、警備は厳重で、当然招待客以外は入れないようになっている。

立食形式でアルコールの提供もあるが、酔って問題を起こすほど飲むような雰囲気でもない。

にもかかわらず不穏な空気が漂っているため、萌はなんとなく胸騒ぎを覚えた。

(晴臣さんに伝えた方がいいのかな)

すぐに会場内に戻ろうとしたところに、この場にそぐわぬ女性の金切り声が響く。

「どうしても私たちを入れられないというのなら、桐生の社長か副社長を呼んでちょうだい! 確かめたいことがあるのよ!」

聞き覚えのある甲高い声の先へおそるおそる視線を向けると、警備員に向かってものすごい剣幕で捲し立てているのは、やはり翔子と玲香だった。その後ろには不機嫌そうな顔の健二の姿もある。