桐生家に双子を連れて行くのはとても緊張したが、晴臣の言っていた通り、とてもあたたかく迎え入れられた。

萌は三年前に一方的に縁談を反故にした過去と、それによって叔父一家が迷惑をかけたことを改めて謝罪したが、晴臣の父である宏一はどちらも不要だと首を振った。

『萌さんに非はひとつもない。それよりも、きっとしなくてもいい苦労をたくさんかけてしまったね。君の父上にも申し訳ない気持ちでいっぱいだ』
『本当に。ひとりで双子の育児は大変だったでしょう。こんなことを言うのはおこがましいけれど、これからは私たちを本当の親だと思って頼ってくれると嬉しいわ』

宏一だけでなく晴臣の母である圭子も涙ぐんで萌の手を取り、これまで手助けできなかった不手際を詫びる。

萌は恐縮してしまったが、双子を連れて挨拶に行くと事前に連絡をしていたため、ふたりのためにたくさんの服やおもちゃを用意していてくれて、歓迎されているのだと実感できた。

双子もはじめは警戒していたが、おもちゃ作戦が功を奏し、すっかり「じいじ、ばぁば」と呼んで懐いている。

そして持参した婚姻届に宏一からサインをもらった。もうひとりの証人欄には、すでに田辺のサインが記してある。

必要書類も揃えて役所に提出し、晴れて萌と光莉、陽太の三人は晴臣と同じ姓となった。